脳の使い方

不思議に思うことがよくあった。

なぜ自分で弾いている時、他人の演奏を聴いている時、

この時々で聴こえ方が違うのだろう。

 

以前の私は自分で演奏している時に音が遠くに聞こえることが多々あった。特にホールが大きくなればなるほど、そのようなことが頻繁に起こった。

他人の演奏を聴く時は、どんな些細な変化も耳に届き色々な世界を感じ楽しむことができた。

 

また、

自分が練習している曲を他人が弾いていると、不思議なことに音が遠く聴こえた。

全く知らない曲だと、ありのままの姿で音楽が耳に入ってきた。

 

どこが違っていたか今ではハッキリと答えが出た。

 

「脳の使い方」なのである。

 

人間は意識して体を動かしている場合と無意識で体を動いている場合では、使っている脳の場所が違う。

意識して動かす場合は前頭葉を使い、無意識の場合は前頭葉を経由しない。

手作業をしながら音楽を聴いている時とリラックスして音楽を聴いている時で聴こえ方が全く違うのもこの脳の働きがあるからだ。

以前の私は意識的に多くの手作業をしながらピアノを弾いていたので、脳が「聴くこと」より「弾くこと」に意識を割いていたのである。

そして毎日そういった弾き方、聴き方をしていると人が自分と同じ曲を弾いていても脳が耳を勝手に遮断してしまって音が遠く聴こえてしまっていたのである。

一種の職業病であったと思う。

 

音を聴くためには手作業を減らさなければならなかったのだが、当時の自分には知る由もなく、手作業を間違わなく繰り出せるようひたすら練習していた。

 

ショパンピアニズム(重力奏法・重量奏法)を身につけていくとこの感覚は劇的に変化した。

この奏法では指の運動量は非常に少なく、弾く意識はほとんど無くなる。

脳は聴くことに集中できるようになり、魔法のように音が広がり出した。

 

今や普通の感覚になってきたが、自分の演奏中に初めて耳が開いたあの瞬間、ふと上を向くと空中に広がる無限の世界を初めて見ることができた。

 

黒木洋平ピアノ教室 ショパンピアニズム モダンピアニズム

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