弾いた後に腕を上にあげて音を膨らませている演奏を日本ではよく耳にする。
皆さんも試してみてもらいたいのだが、一音を鳴らした後に音を膨らませようと腕を回したりあげたりしてほしい。
音が変わって聴こえるはずである。
では実際どうなっているかというと、何も変わっていない。
弾いた後では音は何も変わらないのだ。
ここにピアニストが気をつけるべき点がある。
ピアニストは、これらの体の動きによって実際聴こえている音と自分の中で聴こえている音に誤差が生じているのだ。
ショパンは、ピアノが減衰楽器であることを明確に把握しており、長い音符やシンコペーションの音はあらかじめ大きい音を鳴らさなければならないと弟子達に言っていた。
弾いてからでは、遅いのである。
ピアニストは、常に客観的でなければならない。しかし出てきた響きに心を踊らせなければならない。
このピアノとの距離感というのがとても大切なのだ。
ショパンピアニズムでは、子供の時からこの距離感を徹底して教える。
冷たい頭と熱い心を持て アルフレッド・マーシャル