ピアニズムの継承

私が学んでいたフライブルグ音楽大学では様々な国の教授が教鞭をとっており、中でもエリック・ル・サージュ氏とエルザ・コロディン女史のレッスン内容は日本のそれとは大きく違っていた。多くの時間を体の使い方と音の質に費やすのだ。

彼らは生徒が同じ響きを習得するまで時間をかけて自身のピアニズムを伝える。
なぜかというと、その響きを体現できていないと教師の真意を生徒が理解できないと分かっているからだ。
言ってしまうと、生徒がその音と音楽を気に入らなかったら先生を変えなくてはいけないのだ。

ピアニズムを継承するということは海外の音大では当たり前のように行われており、ピアニズムが合わなかった際には先生を変える手段がきちんと整備されているところにヨーロッパの教育システムの素晴らしさを感じた。
日本の音大では教師を変えるなど大変な問題だ。芸術を、多様性が認められない場所で学ばなければならない息苦しさを少しでも早く改善できればと思う。

日本の教育現場にはピアニズムが存在していない。ヨーロッパでは多くの国の音楽を耳にすることができるが、日本人は日本人の演奏しか知らないということが問題かもしれない。多様性がなくコンクールなど見ても審査基準が枠からはみ出ないのだ。
ロシアにおいては幼少期から徹底してピアニズムを教えたことが今の芸術的レベルの高さに繋がっていると感じる。

一方、声楽に関しては日本でもヨーロッパのようなシステムが存在している。
そのことについては次回声楽とピアノで。

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