手の筋肉の使い方、手首の使い方、腕の使い方、音が発生するまでには様々に体を使う。
しかし、この目に見える動作というのは音質決定の仕上げの段階だといっても良いかもしれない。
お寿司屋を例に出すと、目に見える握りの作業は最終作業であり、大切なのは下準備である。そしてその準備は目に見えない。
ではピアノ演奏の下準備とはどこか。
どこから音質は出発しているのか。
それには2つ大切なことがある。
1つ目。
前回のブログで書いた通り股関節を緩めて下丹田で支えること。
2つ目。
腕の出し方である。
ピアノを弾く際は、まず椅子に座り、その後に腕を持ち上げることによって鍵盤まで手を運ぶが、その運び方がとても大切である。
文章だけで説明させていただくが、
肩関節を一切開かずに手首の下から腕全体を操作すること。
つまり、肘を一切外に開かずに鍵盤に手を乗せるのだ。
こうすると背中の緊張は無くなり下丹田で腕の操作を支えることができる。
演奏中に肩が力む人は、この身体操作を学べば驚くほど改善する。
見た目には違いがほとんど現れないこれらの身体操作であるが、少しの認識のズレが大きくピアノ演奏を変えてしまう。
注意点としては、肩関節を開いて手を鍵盤に乗せた後に、外側に出てしまった肘を内側に入れても手遅れである。
最初の入り方を間違えてしまうと、その後にどのように修正しても背中の状態がまるで違ってしまうのだ。
科学は常に感覚の答え合わせであるが、色々なことが解明され誰にでも的確に伝わるようになると良いなと思う。
それには演奏中の全身の筋肉運動を調べる必要があるかと思っている。腕や指だけ調べても意味が無いだろう。
座り方、立ち方、腕の出し方、目に見えないところから音を磨いていく。
最近のレッスンでは音を出す前の身体操作をメインに行っており、こういうところに拘る教育が導入の段階から広まればいいなと思う。
これらの身体操作をおろそかにしているのはピアノだけなのだ。
他の楽器の1音への執着を、生涯を通して音を磨いていく情熱を、
私達も彼等と同じ勉強をしていく必要があると思う。