ショパンピアニズムに移行して間もない頃には、手や腕の支点について言及することがある。
- 指で言えば第三関節
- 手で言えば手首
- 腕で言えば肩甲骨
これら部位ごとに説明するときは、徹底的に支点を意識してレッスンするが
演奏するときはどうかというと、意識することはまずない。
支点の意識は、初期の段階では有効に働き体の使い方が以前よりは格段に上手くなる。
しかし、意識している段階では、必ずどこかに力みが生じてしまうのだ。
- 指の第三関節を意識すれば、手首と肘はわずかに固まる。
- 手首を意識すれば、肘と肩はわずかに固まる。
- 肩甲骨を意識すれば肩がわずかに固まる。
では演奏するときは、どのようにするかというと、
これら全ての意識を捨て音質のみを意識するのだ。
どういうことかというと、
支点の使い方が上手くなると音質はガラッと変わる。
体の使い方を変えて音質を変える作業が終わったら、音質を意識すれば体の使い方が変わるという様に意識する順番を変えていかなくてはいけない。
音質を追い求めて体をそこに合わせていくと、
複数の支点でバラバラだった体が1つに統制されていく。
そこには支点という感覚はなく、エネルギーがどこにもせき止めらず体の中を流れていく感覚になる。
ピアニストは、音によって全身を統合しないといけないのだ。