以前は感じることがあっただろうか。
調によってピアノの響き方がこれほど違うことを。
平均律のピアノが調によって変わるのだ。
ショパン以前までは「和声での基本」を「ピアノ学習での基本」にも適応していた。
つまりハ長調をピアノ学習の出発地点にしていた。
今では和声的には一番簡単な調性だが、ピアノ演奏の上では一番難しい調だと感じる。
ショパンやネイガウスも同じようにピアノ演奏を考えていた。
常識として習ってきたこととは真逆なのだ。
ショパン、ドビュッシー、スクリャービンを演奏するとき、彼らが同じような音楽の発想を持っており、ピアノが一番美しく響くことを意識して作曲していたと感じる。
共通して彼らのDes durは、美しく響く。
ピアノが持っている歌の魅力をこれほど音にできる調は他にないのではないか。
Des durを演奏する時、柔らかい倍音に包まれ、何か周りの空気がトロリとまろやかになる感覚になる。