ピアノという楽器がいかに繊細かを最近改めて感じる。
私が好きな音は、密集した音ではなく一音で色とりどりな空気が感じられる音である。
ショパンの教則本と出会ったのが大きな転機だった。
彼は本の中で、いかなるパッセージを弾いている時でも手の向きを変えてはいけない。
常に手が自然な形を維持したまま演奏しなくてはいけない。と書いている。
このことを真に理解できると、これほど効率的な演奏方法はないと感じる。
これを実現させるためには鍵盤と指が常に斜めに接していないといけない。
指先の真ん中で鍵盤を弾くことは、ほとんどない。指先や指の腹の斜めを常に使う意識だ。
これは誰でも体感することはできるし、この音を知ってしまうともう前には戻れないだろう。
聴いた人を魅惑する。そういう音が存在するのだ。