ショパンの指遣い

今日レッスンをしていて改めてショパンの指遣いの素晴らしさを感じた。

メロディーを4と5の指を使って演奏させることはショパンの代名詞である。
ノクターンの2番の楽譜を見てもらうとわかるのだが、上から降りてくるところなど544や554など、一般的な奏法の人から見ると首をかしげる指遣いを指定している。

これは指を上げ下げして演奏する発想ではたどり着けない指遣いであり、以前の私なら迷わず他の指遣いを探したと思う。

彼の曲を弾いている時、何かうまくいかいことで頭を悩ませ、ふとショパンの指遣いを見ると、その美しさに鳥肌が立つことがある。

あまりにも芸術的な指遣いなのだ。

 

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強い指を作るという考え方

ショパンピアニズムでも多く語られる、「強い指」「強い指先」を作るということ。
この言葉からは一切芳醇な音を想像できない。

おそらくこの方法論でピアノを習っている方は、キラキラした音が好きでありレガートの感覚もとても直線的だと思う。
柔らかい音を扱う曲が苦手なのではないだろうか?

答えは簡単だ。指先を意識しているからだ。

指先に意識を集中した段階で耳の聴くという機能は、半分くらい失われてしまう。
問題なのは、本人にはわからないことだ。

演奏する際に指先の感覚は持たない方が良い。
骨は強くならないし、指は鍛えられない。それより大切なことは、手のひらの中の筋肉の使い方である。

この手のひらの中の筋肉の使い方にもコツがある。指を使わずに手のひらだけでゴムボールを押し潰す感覚だ。
決して指を使ってはいけない。手のひらだけで行うのだ。ここにソフロニツキーやホロヴィッツが出す芳醇な音の秘密がある。

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柔らかい音の出し方

多くの人が間違った感覚で柔らかい音を出そうとしていると思う。

柔らかい音は、弾いた後に手や腕を上の方向にふわりと上げることで表現できると思っているのではないか。

ここにとても大きな落とし穴がある。

私自身これが間違いであったと気がついたのは、20代の半ばである。
自分の手や腕の動きが脳の誤作動を生み実際なっている音と自分で聴こえている音に大きな誤差があることがわかったのである。

結論から言うと、下から上方向に打鍵することは、まずしない。
どのような弱い音柔らかい音であっても基本はピアノを打楽器として扱い上から下の打鍵で、「積極的に」作り出すのだ。

この積極的ということが、とても大事なのである。力の抜き加減や、腕の回し加減で柔らかさを表現するのではないのだ。

おそらく日本の教育現場でこのことを教えている方は、そういないだろう。まず教師自身が身をもって体現できていないと伝えることは不可能だからだ。
ピアノの可能性を引き出し、ピアノを歌わせるためには、語弊を恐れずに言えば

「ピアノを打楽器として扱う=上から下に叩かないといけない」

鍵盤から指を離さず、指が吸い付くようにとよく言われるが、鍵盤に指がついた状態から弾くことなど、ほぼない。

このことを理解できない方は、腕の重さなど使っておらず、間違いなく指でしかピアノを弾けていない。100年以上遅れた弾き方をしている。

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柔らかい音の出し方

 

ピアニズムの出発点

ピアノは打楽器だ。

小学校でも習うような内容だがこれを理解している人はどのくらいいるだろうか?

日本ではピアノが打楽器だという事を認めない弾き方をよしとしている。
歌うためには、ピアノが打楽器であったら駄目なのだ。

ピアノは打楽器であり、叩いて音がなり、レガートはそこから始まる。

まず出発地点が違うことが問題であり、それを良い音としてきた教師が未だに教育現場に大勢いる。日本はピアノの扱い方という面で世界に100年以上の遅れをとっている。

なぜ100年かというとショパンはすでにそうやって演奏していたからである。
ショパンがピアノのテクニックに大きな革新をもたらしたのだ。

日本はその革新前の弾き方をしている。

ショパンピアニズムでは、ピアノを歌わせるためにピアノを打楽器として扱う。
芳醇なレガートというのは叩くことから始まる。

ショパンピアニズムの共通点

留学中は作品を完成させていくよりピアニズムの研究に没頭していた。
ソコロフ、プレトニョフ、ババヤンの響きは今でも脳裏に焼き付いている。

研究していく中でショパンピアニズムを教えている教師を何人か尋ねた。しかし誰も明確な答えを持っていなかった。
「こういう響きで」「こういう雰囲気で」と言った抽象的なことでしか教えていなかった。
ピアニズムを学ぶときは客観性や論理性を持つべきだと私は考えている。
私はピアニズムを研究している教師は楽器と体の扱い方を教えているとばかり思っていたが、全くそうでなかった。

テクニックは言語化できないといけないというのが、私がピアニズムを教えている上で大事にしていることだ。

そして海外で多くのロシア人のレッスンや演奏を耳にし、ショパンの書いた本やネイガウスの書いた本からヒントを得てようやくショパンピアニズムの根底に流れる共通したテクニックがわかった。ショパンやネイガウスはテクニックを客観性を持って捉えていた。彼らの本を読んでみることをお勧めしたい。

その共通したテクニックというのは、

いかにピアノを打楽器として扱い、その上でピアノを歌わせるかということだ。

ここだけが多く流派が存在するショパンピニズムで唯一共通している点だ。

私はその中でも、ホロヴィッツやソフロニツキーの音と音楽が大好きでありそのピアニズムを教えている。つまり彼らが曲作りの基本としているタッチが私は大好きであり、私もそのタッチを教えているということだ。

体のどこをどう使えば楽器を一番効率よく鳴らせ、尚且つ弾く意識をしないで音を聴けるかということ。

私が教えるショパンピアニズムのレッスンでは、このことは理解してもらえるまで客観性と論理性を持って説明している。