フレーズの作り方②

ピアノは楽器であるので、鳴らすには運動が伴う。

時には音楽と運動のイメージを一致させると、とても大きく役に立つ。

フレーズを作る上でとても多い間違えが、前回述べた「フレーズを収める」という発想である。

運動もそうである。例えば100メートル走である。

スタートとゴールがあり、そこを走っていくわけだが、皆さんはゴールの時にはどのように走っているだろうか。

全速力で走ってきて、ゴール地点に来た瞬間にピタッと立ち止まる人はいるだろうか?

もしも立ち止まったなら、その瞬間には体にとても大きな負担がかかる。

ピアノも同じである、音楽的なゴールはあるが、そこに向かって止めてはダメなのである。

常に走る抜ける意識がなければその音は途端に硬くなる。

 

そしてフレージングである。言ってみればフレージングとはリレーである。

 

バトンを次のフレーズに渡すわけだが、次のフレーズにバトンを渡した方は渡した後もすぐ立ち止まるのではなく、走り抜けているはずだ。

それが本来のフレーズのつなぎ方である。収めてはダメなのだ。

 

ショパンの音楽は、常にクレッシェンドとデクレッシェンドの間を行き来していた。

 

そのような音楽をするには、ゴールも設けて立ち止まると言う発想を持ってはいけない。

音楽とは、常に浮遊しており、次々につないでいくのだ。そのためには、一音たりとも、立ち止まる音を出してはいけない、常に出した音の後まで走り抜けるのだ。

 

黒木ピアノ教室 YOU TUBEチャンネルより

フレーズを収めない

フレーズの作り方

フレーズの作り方

フレーズを作るならフレーズを収めてはいけない

いきなり何を書いているのかと思うかもしれないが、フレーズとは収めてはいけないのだ。

オーケストラを聴くと分かるのだが、ピアノのようにフレーズフレーズを収めて、いわゆる丁寧に演奏するということはしない。

フレーズといのは、曲の初めから曲の終わりまで収めることはない。
この考え方があるだけで、ピアノ演奏というのは何倍も芸術性が増す。

私は子供から大人の生徒まで教えているが、フレーズを収めて演奏させることは決してしない。

なぜこれほど収めさせる指導が日本で多く行われているかというと、基本となる音に響がなく角張っており、丁寧に慎重に弾かないとどうしてもフレーズが作れないからだ。

多くの方に理解して欲しいことは、自分の音を見直さない限り、すぐ表現の限界がくるということだ。

自分が持っている音が、表現を限定しているのだ。

黒木ピアノ教室 YOU TUBE動画チャンネルより

フレーズを収めない

フレーズの作り方

Des durの美しさ

以前は感じることがあっただろうか。
調によってピアノの響き方がこれほど違うことを。
平均律のピアノが調によって変わるのだ。

ショパン以前までは「和声での基本」を「ピアノ学習での基本」にも適応していた。
つまりハ長調をピアノ学習の出発地点にしていた。
今では和声的には一番簡単な調性だが、ピアノ演奏の上では一番難しい調だと感じる。
ショパンやネイガウスも同じようにピアノ演奏を考えていた。

常識として習ってきたこととは真逆なのだ。

ショパン、ドビュッシー、スクリャービンを演奏するとき、彼らが同じような音楽の発想を持っており、ピアノが一番美しく響くことを意識して作曲していたと感じる。

共通して彼らのDes durは、美しく響く。

ピアノが持っている歌の魅力をこれほど音にできる調は他にないのではないか。

Des durを演奏する時、柔らかい倍音に包まれ、何か周りの空気がトロリとまろやかになる感覚になる。

自分の音に飽きる

私は自分の音に飽きることが多いと思う。その時は新しい音、音楽を求めて偉大な演奏家を参考にするのだが、その度に新しい世界が開き、自分の成長に繋がっている。

一つの音を使って音楽を追求することは、そんなに難しいことではない。私は完成された世界を求めることよりも様々な可能性を探してみたくなる。

自分の音に飽きる時は、決まって曲にとってふさわしくない音で演奏している時だ。どれだけ美しい音で弾いていても曲を魅力的に響かせられなければ、飽きるのだ。

音楽ではなく、音に飽きているのだ。

その曲を表現するには、違う音楽表現=違う音を探さないといけないということだ。
そして新しい音を捕まえると、以前やった曲にも良い影響を与える。複雑な表現が可能になり曲の世界観が広がるのだ。

音楽の勉強法がようやく分かってきたように感じている。

今の音楽会を見ると同じ音で全ての曲を演奏している方がほとんどだと感じる。
音を見つけることは、単にタッチを変えることでない。響を作る位置、発音の仕方、和声の作り方を見つけることだ。

タッチを変えるだけで音色を変えている認識の方が大半だと思うが、そうではない。
私も以前の弾き方をしていたら気がつくことはできなかった。

ショパンの演奏法に出会えてよかったと心から思う。

響の下に行かない

ピアノを弾いている時、響きをどこの位置で聴いているかということは最重要事項である。

耳の使い方を知らなくてはホールで響き渡るレガートを実現することは不可能に近い。

よく勘違いされがちな考え方がある。

 

音をピアノからホールに向かって音を届けるというものだ。

 

これはほとんどの教育現場で教えられていることではないだろうか?

この考え方では、まず響かない。そしてこの方法で演奏している人は音を広げようと肘や頭ががぐるぐると回り出すのだ。

ではどういう考え方で聴くのか。

 

  • 耳の位置を高いところに置き、そこから指揮者のように全体を常に聴いている感覚。

  • ピアノからホールではなく、すでに空中で音が響いているという感覚。

 

その時に大事なのは、自分が響の下に行かないことだ。常に全体を見渡すように聴いていなくてはいけない。

この感覚は、正しいピアノの扱い方・体の扱い方をしていないと実感することは不可能であるが、これがわかった瞬間に音楽の可能性が無限に広がるのがわかるだろう。テクニックというのは、言語化することに大きな意味があり、耳の使い方はテクニックである。

 

黒木ピアノ教室 YOU TUBEチャンネルより

響きの聴き方