柔よく剛を制す

どれだけ強靭な関節を持っていても、どれだけ強靭な筋肉を持っていても柔らかさがなければピアノは歌わない。

剛強さをピアノにぶつけたところで、鍵盤から自分に向かって力を跳ね返されるだけである。

しなやかさは、力を使わないことではない。
しなやかさとは、力が関節で止まらずに隅々まで連動することである。

例えば腕の動かし方にしても座り方と重心の取り方を理解していなければ決してしなやかに使うことはできない。
腕の動きを行うための土台の準備がいるわけだ。

座った状態での土台とは、下丹田股関節の2つだ。

足をキュッと閉じて座っている方、沢山いるのではないだろうか?
股関節は緩めておかなくてはいけない。閉める方向で考えている方は、閉めれば閉めるほど自分の耳の機能が落ちていることに早く気がつかなくてはいけない。股関節を緩めてみると、いかに背中と腰と首が緊張していたか分かるはずだ。

背中で重心を取っている方も多いのではないだろうか?
背中にエネルギーを溜めてしまうと、耳の機能は落ち、動きも柔ではなく剛になってしまう。
剛で演奏している人は、総じて肘を使って力を外に逃がしており、音楽も下から上の方向に作っている。
間違った重心の取り方がどれだけ演奏を困難にしているかは効率的な演奏法を体得した人でないと理解できない。

下丹田で身体操作をでき始めると今より何倍も弾きやすくなると思う。

日本古来より、武術も舞踊も重心は下丹田である。
足の裏で地面を蹴っては駄目である。膝に力を入れては駄目である。股関節を緊張させては駄目である。腕の操作を肩や肘からしては駄目である。

古武術、合気道、日本舞踊、歌舞伎、能、狂言

しなやかな動きを必要とするものには、共通して同じ意識が存在する。

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