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私の恩師

10月21日にドイツで4年弱お世話になった恩師が逝去された。
私の人生での分岐点を言うなら彼と出会ったことだと思う。

最初のレッスンは今でも覚えている。
シューマン作曲の謝肉祭を3曲目まで弾いたところで、演奏を止め、助言してくれた。
「とても才能がある。でも色々学ばないといけない。」
生きてきた中で自分のことを才能があると言ってくれたのは彼が初めてだと思う。お世辞だとしてもとても嬉しかった。

彼の考えは単純で、音楽を楽しむためのルールを知り一緒に味わおうと言うものだ。
それからのレッスンは彼がだした課題をこなしていくというもので、彼は知っている限りの知識・技術・感性を惜しげも無く全て教授してくれた。

レッスンの時の彼は、どれほど嬉しそうな顔をしていたことだろう。これほど嬉しそうにレッスンをしてくれる教師に私は初めて出会った。
私が理解できた時は、いつも素晴らしいと言って褒めてくれ、嬉しそうな表情を浮かべていた。

「私は演奏はしない。教師として生徒を教えるには時間がない。」
と仰っていたが、横で弾いてくれる時の天真爛漫な表情を忘れることはできない。
特にモーツァルトとシューベルトを愛していた彼のその演奏は、いつも私の心を震わせた。

退官された後、生徒が居酒屋に呼ばれた。
「これからはSieではなく、Duで呼んでくれ。私のこともアンドレアスと呼んでくれ。乾杯」
(ドイツ語でSieは目上の人に対して使う言葉であり、Duは友達などに使う言葉である)

私はその後もDuと呼ぶことができなかったが、彼は生徒ではなく音楽家仲間として私達と接してくれた。

彼と過ごした時間を思い出すと、全てが優しさに満ち溢れている。

アンドレアス・インマー

私の人生を変えてくれた恩師である。
とても素敵な人だった。

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