ショパンの練習法

調律は演奏家でなく調律師の仕事なのだから、ピアニストは楽器の練習のうちで最も難しいことの一つから免れていると言える。従って可能な限り美しい音を簡単に奏でて、長い音符も短い音符も弾きこなし、どんな場合にも高度な演奏力を発揮するには、手が鍵盤に対して最も自然な位置を保つだけで良い。 ショパン 

          *弟子から見たショパンより引用

この序文で始まるショパンの技法の基礎についての記述は、現代でも最も価値のあるものの一つだと思う。
単音から重音について論理的に考えてテクニックを分解している。

ショパンは、精神的な部分とテクニックを分解して書いてあるが、本来はテクニックは精神から生まれて来るべきだと考えており、機械的なリズム練習や音階練習は何の意味も持たないと生徒に言っていた。3時間以上も練習しようものならひどく怒っていたようだ。
リストの意見は反対で、抵抗があり重いピアノで音階から重音など、指を鍛える練習ならば何時間でもどれだけでもするよう生徒に言っていた。
もちろんのことながら、リストはカルクブレンナーの開発した手導器を愛用していたようだ。

*手導器についてはこちらからご覧になれます。

ショパンは気分がすぐれない時はエラールのピアノを、気分が乗っている時はプレイエルで練習していたようだ。しかしエラールはどう弾いても完成された響きが出るため耳が音に満足してしまいタッチの感覚が麻痺してしまい危険だと考えていた。
リストはエラールのピアノを好んで使用していており、ショパンとはピアノに求める世界が違ったのだ。やはりテクニックは精神から生まれるのだと思う。

現代では、どう弾いても良い音が鳴るように設計されているピアノが多いと思う。私のピアノは調律師に頼んでアクションを変えてもらっておりタッチが悪いとすぐに音に反映される。
どう弾いても完成された音が出るピアノでなら6時間でも練習できるだろうが、すぐにタッチの影響を受けるピアノでならショパンの言う通り3時間が限界であろう。

何時間でも練習できるというのは、精神を研ぎ澄ませていないのかもしれない。

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