ショパンピアニズムの音の世界に入ると新しい感覚が生まれてくる。
それは、自分から音楽を発信するのではなく、音楽が自分に向けて発信してくる感覚だ。
その世界を味わうと、自分から何かを表現することが音楽を汚してしまうかのように感じてくる。
何もしなくていいのだ、ただ自分がそこにいればいい。
美しくピアノを扱えればあとはそこにいればいいのだ。
再現芸術の本当の意味を私は最近になって理解してきた。
ピアノを弾く行為は能動的だが、受動的に音を感じなくてはならない。
この境界線を間違えてしまうと、途端に作り物の音楽に化けてしまう。
練習とは、音楽に対して受け身になっていく行為だと感じている。