ソコロフを聴いた時、ピアノの可能性を知った。
それからはひたすら美しい音を追いかけてきた。
レッスンでは、ピアノが持つ最高の響きを子供から大人の方まで同じように伝えている。
しかし、子供と大人では同じ指導をしても伝わり方が違っており、なぜそのような違いが出るのか試行錯誤が続いていた。
感触としては、大人の方は私が出した音を同じような形で自分の中に取り入れることができた。
子供は、私が出した音を追い求めるも、体に硬さが見られ、それに伴い音にも硬さがあった。
その違いが何故出てしまうのか分からないまま、私はピアノから出せる最高の音を目指して指導を続けていた。
最近だが、当たり前のことが指導方針から抜け落ちていることに気がついた。
それは、体格に違いがあることだ。
私よりも骨格も筋力も劣る子供に同じ音質を求めたら、体のどこかに硬さが出てしまって仕方ないのだ。
いや、正確にいうと、私自身は同じ音質を子供には求めておらず、
「このような響きを目指して欲しい」と横で弾いてみせることで
「響きの方向性」を示していた感覚に近い。
しかし横で弾くということ自体が、吸収力のある子供にとっては影響があるのだ。
無意識に同じ音質を追いかけてしまい、力みが出てしまう。
こんな単純なことに何故長い間気がつけなかったのか、正直悔しく思っている。
最近は、横で弾くときは音質を少し抑えるようにしている。
抑えるといっても倍音の量は変わらず、その子の体格に合わせて音の密度を変えているといった感じだ。
そうしてみると、大人と同じように美しい音をリラックスした状態で出せるようになってきた。
効果はとても高かった。
教える立場の人は、横で同じ曲を弾く時は、生徒の体格に合わせて音の密度を気をつけないといけない。
響きはそのままに、密度を調整する。これは指導者に必要なテクニックだと感じる。