言葉の力

私は現在、埼玉県戸田市でピアノ教室を開いています。日々ピアニズムの研究を続けながら生徒に伝わりやすい方法を模索しています。

レッスンを行う中で言葉というのはなかなか難しく間違った伝わり方をしてしまうなと感じております。

以前、体を前後に動かしすぎる生徒がおり、なんとか楽に弾いてもらおうとアドヴァイスしたことがありました。

 

「体が動きすぎてて、それだと自分の音を聴けないよ。あまり動きすぎないで」

 

すると体を動かすまいとカチカチに固まってしまい逆に力んでしまいました。

次に実験をしてもらいました。

一音を鳴らしてもらい、それをペダルで保留。

音を持続したまま目を閉じ体を前後に動かして聴こえ方の違いを感じてもらいました。

 

「前に行くと音が大きくなり、後ろに行くと小さくなる」

 

生徒が言いました。

 

そうなんです!

体を動かさない方が良い理由は、耳の位置が変わって音を聴けなくなるからなんです。体を後ろに引いたり前に倒したりしても実は、

 

『音を聴いているつもり』

 

になっているのです。

 

そこで、

「耳の位置を変えると音が変わっちゃうでしょ?体は意識しなくていいから音をよく聴くために耳の位置を変えないように気をつけてみて」

 

このように助言してみると、体の硬さはとれ音も立体的になりました。

 

自分自身でもそういった経験はよくあり、

 

「脱力」と思うより「リラックス」と思った方がうまくいきます。

「テンポを守って」より「曲の呼吸を邪魔しないで」と思った方が自然な流れになります。

「音を大きくして」より「響きを厚くして」の方が色彩豊かになります。

「よく聴いて」より「耳を天井に置いてきて」の方が立体感が出ます。

 

言葉の力は大きいです。

 

そういったところも日々研究していかなくてはいけませんね。

 

 

 

黒木洋平ピアノ教室 ショパンピアニズム モダンピアニズム

戸田駅徒歩1分 池袋/新宿/赤羽/大宮からも埼京線でいらしていただけます

 

 

ショパンピアニズム・重力奏法

ホロヴィッツ、アルゲリッチ、ランラン、プレトニョフ、ギレリス、ソコロフ、ソフロニツキー

彼らは、国籍や音楽観は違えど同じ体の扱い方・楽器の扱い方で芸術を生み出している。

日本ではショパンピアニズム、重力奏法、重量奏法などで知られているが、この奏法は日本で禁止されていることだらけであり、実践しようものならすぐに注意を受ける。

小さい頃、私は上に書いたピアニストの演奏が大好きであり、子供ながらにも音楽が歌っていると感じていた。
今は彼等が同じ楽器の扱い方をしていたのだと分かるが、当時はただ魔法にかけられるだけだった。

彼らは座り方も弾き方も全然違って見えるが、体の扱い方と楽器の扱い方の意識が共通している。

彼らの演奏時の手を観察していると、日本で教えられているような指を上げ下げする動きはせず、指自体はほとんど動いてない。その代わりに手首と腕が上下しているのがわかるだろう。
これは楽器の扱い方、腕の重さ、手の筋肉、手首、肘の使い方を知らなければ不可能なことである。

ピアニズムの研究を始めると、それまでと体の使い方と楽器の扱い方があまりにも違い、戸惑った。

ピアノを弾くのに指を使わないのだ。

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弟子から見たショパン

なぜこの本が日本で知られていないのでしょうか。
もっと早くに出会いたかった。

ショパンは、世界中の人が知っている天才作曲家です。
ですがピアノ教師としての彼の才能は、それほど知られている訳ではありません。

ショパンの時代は、現代と似たように名人芸的なテクニックがもてはやされました。ショパンはそういったことには関心を示さず、むしろ忌み嫌いピアノをいかに美しく響かせるかを徹底的に追求しました。

私にとって完璧なテクニックとは、全ての音にニュアンスをつけて弾けることだ。                                    F・ショパン 

彼の作った曲は美しい歌で彩られており、ピアノを歌手と同等に扱えないと曲の魅力がまるで出てきません。
歌手の声をどのような音で紡ぎ出していたのか今では想像するよりないですが、彼が書いたメソッドの本を読むと少し見えてきます。

彼の手の配置は独特です。
肘は外に出さず、手も自然な形のまま鍵盤におく
その時に置く基本の配置は

「ド・レ・ミ・ファ・ソ」

ではなく

『ミ・♯ファ・#ソ・#ラ・シ』

これほど腕全体が鍵盤と一体化できる配置は他にはありえない気がします。ショパンも同じことを思っていました。
この配置を知れた時、やっと一歩を踏み出せた感覚を味わいました。

 

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感動した音

人生で初めて聴いた音でした。

 

柔らかくて丸い音

 

ホールを隅々まで埋め尽くし、目に見えそうなくらい立体的な響きが耳の奥までスーッと入ってくる。

 

ソコロフの奏でる音は衝撃でした。

 

訳がわからずコンサートが終わり、深い感動とともに悔しくなりました。

 

音も弾き方も自分とは明らかに違う。

 

まずは形から入ろうとソコロフの弾き方を真似してみました。

彼の音は大きく振りかぶって弾いているのに全く角がなく柔らかい音。

自分がそのように弾いて出る音といえば、鍵盤にハンマーを叩きつけたような暴力的な音。自分の音ながら耳が壊れそうでした。何かが違う。

 

そんな時出会いがありました。

 

『弟子から見たショパン』

 

人生でこの本に出会っていなかったら、どれだけ損をしたのでしょうか。