美しい音

1音を美しく弾けたなら、その先にあるのが音の組織化だ。
1音を美しく出すだけでも相当の時間を費やさないといけないのだが、2音以上を扱い出すと音と音の組織化をしないといけない。

ピアノは打楽器であり、その性質を理解した上でなくては組織化はできない。
ドとソの2音を鳴らす時でも、オーケストラの音配置のイメージや絵画の前景と後景のイメージなどが演奏者になくてはならない。
また作曲家によって、その2音の距離感は様々に変えなくてはいけないし、響きについて多くの可能性を知っていなくてはいけない。

1音を美しく出せないことには始まらないが、2音以上になった時に初めて芸術的な美しさが現れる。
更には、短いフレーズを美しく演奏できても曲全体が美しく響いていなかったら、それは美しい音とはいえない。
音楽は、常に全体に目を配らせながら、演奏者それぞれが想像力や教養を複合して1曲を創造していくのだ。

美しい音とは全体が美しく演奏された時のみ聴衆は感じる。
しかしそれと同時に、美しく演奏するためには1音の美しさにこだわらないといけない。
最大の美しさを手に入れるために、最小の美しさを研究する。

私が1音にこだわる理由は、ここにある。

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